美味しさと人体の関わり
- 山野熊さん
- 5月19日
- 読了時間: 3分
更新日:5月20日

〜味を感じるしくみの前に知っておきたいこと〜
食べ物を口に運ぶその瞬間、私たちの身体の中では驚くほど多くの反応が起こっています。それは単なる「お腹を満たす」ためだけではなく、心や体、そして健康状態にまで深く関係しているのです。
この記事では、次回「味覚」について掘り下げる前に、「美味しさとは何か」「どう体とつながっているのか」という基礎について整理してみましょう。
食品の機能性 ― 食べ物は“機能”を持っている
食品は、ただ栄養を補うだけの存在ではありません。実は、**体に働きかける“機能”**を持っています。
食品には次の3つの機能があるとされます:
一次機能:栄養機能
私たちの体を作り、動かすためのエネルギー源や栄養素。タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどがこれにあたります。
二次機能:感覚機能(美味しさ)
見た目、香り、味、食感など、五感を通じて感じる“美味しさ”。ここに“好き”や“嫌い”といった心理も関わってきます。
三次機能:生体調節機能
食品に含まれる成分が、体の調子を整えたり、病気を予防したりする機能。例えば、ポリフェノールの抗酸化作用、食物繊維の整腸作用などです。
食行動に影響を与えるもの
私たちが「食べたい」と感じたり、「美味しい」と思ったりする背景には、いくつかの要素があります:
生理的要因:空腹・満腹、栄養不足、ホルモンバランスなど
心理的要因:気分、記憶、ストレス、嗜好、慣れ
環境的要因:季節、時間、場所、誰と食べるか、文化や習慣
つまり「美味しさ」は、その人の状況や心の状態によっても変わるのです。
食品の生理機能
食べ物の中には、身体のさまざまな働きに作用する成分が含まれています。
免疫力を高める
血圧や血糖を調整する
腸内環境を整える
精神状態を安定させる
これらは薬ではないけれど、薬に近い力とも言われ、近年「機能性表示食品」などにも注目が集まっています。
食べ物を構成する基本的な要因
美味しさや機能を左右する要因は、主に科学的要因と物理的要因に分かれます:
科学的要因:食品中の成分(糖、アミノ酸、脂肪酸など)やその化学反応
物理的要因:食感、温度、硬さ、水分量など
これらが「香ばしさ」や「口どけ」など、味の奥深さを形づくっています。
食べる人の側の要因
一方で、食べる側=人間の感覚や体質も、美味しさの感じ方に影響します。
感覚特性
視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚の働き方の違い。個人差が大きいです。
味覚感度
甘み・塩味・酸味・苦味・うま味に対する感度の高さやバランス。年齢や体調、薬の影響などでも変わります。
味の伝達経路
味は舌だけでなく、鼻や喉の粘膜、そして神経系を通して脳へ伝わり、初めて「美味しい」と感じるもの。この経路に異常があると、味覚障害にもつながります。
次回予告:味覚の世界へ
「美味しい」と感じるには、食べ物と人の間にこれほど多くの要素が関わっているのです。次回は、いよいよ「味覚とは何か」について、もう一歩踏み込んでいきます。
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