健康食品と不健康食品 ― 薬と毒の視点から食を読み解く
- 山野熊さん
- 2025年7月19日
- 読了時間: 6分

私たちは日々、数え切れないほどの食べ物を口にします。その一つひとつが、体にとって「栄養」になるのか「毒」になるのか──その判断は、意外と難しいものです。
一方で、薬と食品の違いについても、明確に説明できる人は少ないかもしれません。どちらも体に作用する物質でありながら、その目的や扱い方には大きな違いがあります。本記事では、「薬と食品」「栄養と毒」という二つの軸から、健康食品と不健康食品の違いを明らかにしていきます。
食品と薬の違いとは?
薬とは、病気の治療や症状の緩和を目的として投与されるもので、厳密に成分・用量が管理され、国による承認が必要です。たとえば血圧を下げる降圧剤や、風邪の症状を抑える総合感冒薬などが該当します。
一方、食品は私たちの命を維持し、日々の活動を支える「燃料」としての役割が基本です。米や野菜、肉、魚など、普段の食卓に上る食材の多くは、薬のように“狙って作用する”ことはありません。
ただし近年では、ヨーグルトや納豆、青魚、緑茶など、特定の生理機能をサポートする「機能性食品」も登場し、薬と食品の境界は徐々に曖昧になっています。
栄養と毒の境界は“量と体質”で決まる
ここで一つ、古くから伝わる格言を紹介します。「すべてのものは毒であり、毒でないものはない。重要なのは“量”である」──これは16世紀の医師パラケルススの言葉です。
塩は、生命維持に不可欠な電解質ですが、過剰に摂れば高血圧や脳卒中のリスクを高めます。ビタミンAも、適量であれば免疫力を高め、皮膚や粘膜の健康を保ちますが、過剰摂取すれば肝障害や胎児奇形を招く恐れがあります。
つまり、栄養と毒は表裏一体。それがどちらに作用するかは、「摂取量」と「その人の体質」によって決まるのです。
健康食品とは“食べる薬”である
それでは、健康食品とは何でしょうか? 明確な定義はありませんが、一般的には「身体の機能をサポートする食材・製品」を指します。
たとえば、納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」には、血液中の血栓を分解する作用があるとされ、脳梗塞や心筋梗塞の予防に効果が期待されています。また、青魚(サバ・イワシなど)に含まれるDHA・EPAは、脳神経の保護や中性脂肪の低下に寄与し、認知症や生活習慣病の予防に有用です。
こうした食品は、即効性こそありませんが、継続的に摂ることで“食べる薬”としての役割を果たします。まさに「薬に近い食品」とも言えるでしょう。
不健康食品は“習慣的な毒”になることも
一方で、カップ麺、清涼飲料水、スナック菓子、加工肉などのいわゆる「ジャンクフード」は、手軽で美味しい反面、栄養価が低く、糖分・塩分・脂質が過剰に含まれています。
たとえば、ソーセージやベーコンに多く使われる「亜硝酸ナトリウム」や「リン酸塩」は、発色や保存のために加えられますが、過剰摂取により腎臓や血管への負担が懸念されています。実際、世界保健機関(WHO)は、加工肉を「グループ1(ヒトに対する発がん性がある)」に分類しています。
また、清涼飲料水に多く含まれる「果糖ブドウ糖液糖」は、血糖値を急上昇させるだけでなく、肝臓に脂肪を蓄積させて脂肪肝を引き起こす可能性も報告されています。
つまり、不健康食品は毎日・大量に摂ることで“静かな毒”となり、病気の原因になる可能性があるのです。
食品が薬にも毒にもなる──その鍵は「知識」と「習慣」
「薬」は基本的に一時的な処置です。痛み止めや抗生物質は、症状の緩和や病原菌の駆除を目的とします。しかし、食べ物は毎日、体を作る“素材”そのものです。
つまり、**食品は“ゆるやかに効く薬”にもなるし、“じわじわと効く毒”**にもなり得るということです。
ここで大切なのは、「食べる側の知識と選択」。・「お菓子を完全にやめる」のではなく、「頻度と量を意識する」・「ヨーグルトを毎日食べる」だけでなく、「砂糖の量を確認する」こうした習慣と気づきが、健康と不健康の分かれ道になるのです。
おわりに:あなたの食卓は、薬か毒か?
健康食品と不健康食品の違いは、単なる“成分の良し悪し”ではありません。それらが、あなたの体にとって「必要な薬」になるのか、「不要な毒」になるのかは、**“量・頻度・組み合わせ・あなたの体質”**によって決まります。
今こそ、食べ物の持つ力を見直し、「栄養と毒」「薬と食品」の境界を意識する食生活をはじめてみませんか? 1. 「薬」と「食品」は何が違うのか?
観点 | 薬(医薬品) | 食品 |
主な目的 | 病気の治療・予防 | 栄養補給・生命維持・嗜好 |
法的定義 | 医薬品医療機器等法により定義・規制 | 食品衛生法で規制(緩やか) |
用量管理 | 厳密(医師・薬剤師の指導下) | 自由(自己判断で摂取) |
効果 | 明確な作用機序がある | 緩やかだが長期に影響 |
副作用 | あり(添付文書必須) | 基本的に安全(ただし過剰摂取やアレルギーに注意) |
境界領域 | 生薬・漢方薬・サプリメント | 機能性表示食品、特定保健用食品など |
補足:薬は「即効性」が重視される一方、食品は「長期的な体質改善や予防」のために日常的に摂取されます。ただし近年では、食品でも**特定の作用を持つもの(プロバイオティクス、ポリフェノールなど)**が注目され、「食べる薬」として扱われるケースも増えています。
2. 栄養と毒:すべては“量と体質”次第
成分 | 適量での働き | 過剰でのリスク |
食塩(NaCl) | 電解質バランス・神経伝達 | 高血圧・脳卒中リスク増 |
ビタミンA | 目の健康・皮膚再生 | 肝障害・胎児奇形の危険(脂溶性) |
カフェイン | 覚醒作用・集中力UP | 動悸・不眠・中毒 |
アルコール | 血行促進・リラックス | 肝障害・依存症・発がん性 |
3. 健康食品と不健康食品:薬と毒の視点で分類する
項目 | 健康食品 | 不健康食品 |
栄養密度 | 高い(ビタミン・ミネラル豊富) | 低い(カロリーのみ) |
体に与える影響 | 炎症を抑える・代謝を整える | 炎症を促進・血糖を乱す |
医薬的作用 | 抗酸化、腸内環境改善など | 依存・過剰摂取の誘発 |
科学的裏付け | 多い(プロバイオティクス、オメガ3など) | 有害性の研究報告も多い |
4. 成分比較:ブロッコリー vs スナック菓子
項目 | ブロッコリー(100g) | スナック菓子(ポテチ60g) |
カロリー | 約33kcal | 約330kcal |
ビタミンC | 約54mg | 0mg |
食物繊維 | 約3.7g | 0.5g |
脂質 | 約0.5g(不飽和脂肪酸) | 約20g(飽和脂肪酸多め) |
食塩相当量 | 約0g | 約0.6~1.2g |
科学的評価 | 抗酸化・がん予防効果あり(※1) | 高脂肪・依存性が指摘される(※2) |
5. 健康食品が「薬のように働く」例
食品 | 成分 | 作用 | 科学的裏付け |
納豆 | ナットウキナーゼ | 血栓溶解 | 脳梗塞・心筋梗塞の予防に可能性(※3) |
青魚(サバ・イワシ) | DHA・EPA | 脳神経保護・抗炎症 | 認知機能改善、心疾患予防(※4) |
ヨーグルト | 乳酸菌 | 腸内環境改善 | 便秘・アレルギー抑制(※5) |
緑茶 | カテキン | 抗酸化・抗菌 | 生活習慣病リスク低減(※6) |
6. 不健康食品が「毒のように働く」例
食品 | 問題成分 | リスク | 科学的裏付け |
加工肉(ベーコン・ソーセージ) | 発色剤・保存料・飽和脂肪酸 | 大腸がんリスク | WHOが「グループ1発がん性物質」に分類(※7) |
清涼飲料水 | 果糖ブドウ糖液糖 | 肝機能障害・糖尿病 | 脂肪肝・肥満との関連多数(※8) |
菓子パン | トランス脂肪酸・砂糖 | 心疾患・血糖乱高下 | トランス脂肪酸禁止国多数(※9) |
出典・参考文献
(※1)国立がん研究センター「がん予防のための食事指針」
(※2)BMJ Open 2019「Ultra-processed food and risk of depression」
(※3)Tanaka et al., “Fibrinolytic and anticoagulant effects of nattokinase”
(※4)JAMA. 2016「Omega-3 Fatty Acids and Cardiovascular Disease」
(※5)Gut Microbes 2018「The impact of probiotics on gut microbiota」
(※6)Green Tea Consumption and Mortality in Japan (Ohsaki Study)
(※7)WHO/IARC Monographs: Processed Meat and Cancer Risk
(※8)American Journal of Clinical Nutrition 2012「Soft drinks and NAFLD」
(※9)WHO「Trans fats elimination framework」









