油脂類のすべて:種類・調理特性・健康機能
- 山野熊さん
- 7月18日
- 読了時間: 6分
更新日:7月29日

私たちの食生活に欠かせない「油脂類」。単なる“脂”ではなく、調理の技術や味、そして健康にも大きな影響を与える重要な食品成分です。この記事では、油脂の種類から調理特性、さらに健康に関する最新トピックまで幅広く解説します。
1. 油脂類の種類と特徴
分類 | 主な例 | 常温状態 | 主な脂肪酸 | 特徴 |
植物性油脂 | キャノーラ油、オリーブ油、大豆油、ごま油 | 液体 | リノール酸、オレイン酸 | 不飽和脂肪酸が豊富。酸化にやや弱い。 |
動物性油脂 | ラード、バター、牛脂 | 固体 | 飽和脂肪酸 | コクが強く、加熱に強いが健康面で注意も必要。 |
加工油脂 | マーガリン、ショートニング | 半固体 | トランス脂肪酸(加工時に生成) | 食感改善に使われるが摂取過多は健康リスク。 |
2. 油脂の調理特性とは?
油脂は調理のさまざまな場面で重要な役割を果たします。
▶ 接着防止・防水性
油脂はフライパンや型に塗ることで、食品がくっつくのを防ぎ、水分を通さないバリアにもなります。
▶ クリーミング性
バターやマーガリンなどを空気と一緒に泡立てることで、ケーキ生地にふんわりとした構造を作ります。
▶ ショートニング性
パイやクッキーなどで見られる「サクサク感」は、油脂がグルテンの形成を妨げることで生まれます。
▶ 乳化性
油と水を混ぜ合わせる性質。マヨネーズやドレッシングは、卵黄などの乳化剤と油脂の力で安定しています。
3. 調理による油膜の変化
油脂は加熱や保存条件によって変質します。
▶ 酸敗(油の劣化)
光・空気・熱にさらされることで油が酸化し、嫌なにおい(油やけ)や味の変化を引き起こします。
▶ 自動酸化
酸素と反応して自然に進行する酸化。二次酸化物(アルデヒド類)などの有害物質が生まれることもあり、健康リスクの原因にもなります。
4. 油脂を用いる主な調理法
調理法 | 特徴・代表例 |
揚げる | 高温で表面をカリッと、内部をジューシーに。酸化には注意。 |
炒める | 食材の香りを引き出す。油の風味も活きる。 |
焼く(油使用) | フライパンでの焼き物。接着防止や焼き色に貢献。 |
練り込む・混ぜる | パン・お菓子に使用。風味や食感のコントロールに不可欠。 |
5. 新しい機能性を持つ油脂類
健康志向に応える「機能性油脂」が注目されています。
▶ 植物ステロール強化油脂
植物性ステロール(フィトステロール)には、コレステロールの吸収を抑える働きがあり、血中コレステロールを低下させる機能が期待されます。マーガリンやスプレッドに応用。
▶ 中鎖脂肪酸油(MCT)
消化吸収が早く、エネルギー源として使いやすい。スポーツやダイエット用途で人気。
6. 新食品素材:代替たんぱく製品の進化
植物性タンパク質が環境・健康志向から注目されています。
▶ 大豆たんぱく製品
豆腐・納豆・湯葉:伝統的で高栄養価。
大豆ミート:食感を肉に近づけた加工製品。ベジタリアンやヴィーガン料理に。
▶ 小麦たんぱく製品(グルテン製品)
グルテンミート(セイタン):高タンパク・低脂肪。歯ごたえが強く、代替肉に使われる。
7. 食物繊維との関係
油脂と組み合わせることで、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を助ける効果が。また、食物繊維が多い食事は、腸内環境を整え、油脂の過剰吸収を抑制する役割も。
8. トランス脂肪酸:構造と健康リスク
▶ 構造
天然にはほとんど存在せず、水素添加処理によって生成される「不自然な形の不飽和脂肪酸」。
▶ 薬理作用・健康影響
LDL(悪玉)コレステロール増加
HDL(善玉)コレステロール減少
心疾患リスクが上昇するため、WHOは1日総エネルギーの1%未満に制限を推奨。
✍️まとめ
油脂は、単なるエネルギー源ではなく、「おいしさ・食感・健康」の要です。選び方や使い方を見直すことで、日々の料理もグレードアップします。新しい油脂や代替素材との組み合わせも、これからの食の未来を切り開く鍵となるでしょう。 🌍 トランス脂肪酸(iTFA)の禁止または厳格規制実施国
① WHOが「最高基準(ベストプラクティス)政策」として認定している国(モニタリング・強制力を伴う)
オーストリア、ノルウェー、オマーン、シンガポール→ 2025年5月にWHOから認定された4国。信頼性の高い実施体制が評価されました。世界保健機関
デンマーク、リトアニア、ポーランド、サウジアラビア、タイ→ 2024年にWHOより認定を受けた5国(上記と合わせて現在は計9国)。
② ベストプラクティス政策を制定し実施中とされる国々(iTFA ≤ 2 g/100 g または PHO 禁止/両方)
以下の国・地域では WHO が「すでに政策が効力を持つ」と認定した政策を実施しています:
ヨーロッパ地域:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、トルコ、英国。
アメリカ大陸:カナダ、アメリカ合衆国、チリ、ブラジル、ペルー、ウルグアイ。
アフリカ:南アフリカ、ナイジェリア。
東南アジア/西太平洋地域:バングラデシュ、インド、タイ、シンガポール(PHO禁止を含む)。
中東/東地中海地域:オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン。
特に アメリカ、カナダ、シンガポール、タイ、サウジアラビア、オマーン は PHO(部分水素添加油)の使用を全面禁止する政策を導入しており、これは WHO のベストプラクティスのもうひとつの形式です。
✅ 総まとめ表
地域 | 実施国(代表例) | 規制形態 |
ヨーロッパ | デンマーク、オーストリア、ノルウェー、ポーランド、リトアニア、… | iTFA ≤ 2%(ヨーロッパ規制 EU全域含む) |
北米・南米 | カナダ、アメリカ、チリ、ブラジル、ペルー、ウルグアイ | PHO禁止および/または iTFA ≤ 2% |
アフリカ | 南アフリカ、ナイジェリア | iTFA ≤ 2% |
アジア・中東 | シンガポール、インド、バングラデシュ、タイ、オマーン、サウジアラビア、UAE、バーレーン | PHO禁止/iTFA ≤ 2% |
その他 | 一部東ヨーロッパ・中南米諸国などでも導入済み | 同上 |
📌 現状と留意点
現時点で 約60か国 が WHO のベストプラクティス政策を導入しており、世界人口の約46%が保護されています。世界保健機関+3世界保健機関+3foodnavigator.com+3
ただし、インド、バングラデシュ、フィリピン、ウクライナなどは法制化済みでも**施行時期が未定(あるいは準備中)**の事例も含まれます。
一方、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、エジプト、イランなどは、まだベストプラクティス規制を導入していないか、法整備が進んでいない状況です。
🧠 補足:WHOのベストプラクティスとは
WHO が推奨する「ベストプラクティス政策」は、以下のどちらかまたは両方を制度化したもの:
すべての食品で脂肪100gあたりの工業的トランス脂肪酸が2g以下
部分水素添加油(PHO)の製造または使用を食品中から全面禁止
これには、厳格な監視体制と違反時の罰則も含まれます。
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