味覚とは?美味しさの科学と「うま味」の正体を探る
- 山野熊さん
- 5月20日
- 読了時間: 3分
「美味しい」と感じる瞬間。そこには科学的なしくみと人間の感覚が密接に関わっています。この記事では、味覚感度や味の伝達経路、美味しさの構造要因を詳しく解説し、最後には実際の食品とその「うま味」を生み出す成分を具体例とともにご紹介します。

味覚感度と「おいしい濃度」
人間は5つの「基本味」を感じ取る感覚を持っています:
甘味
塩味
酸味
苦味
うま味
この中でも、**甘味・塩味・辛味(刺激性)**は、日常的な「おいしさ」と直結する味です。
味覚感度とは?
味覚感度とは、どれだけ薄い味を感じ取れるかという能力のこと。この感度には個人差があり、年齢・体調・遺伝・経験などにより変化します。
呈味物質の認知域と弁別閾
認知域:味を感じたと認識できる最低濃度
弁別閾:2つの濃度の違いを「違う味」として判別できる最小限の差
たとえば、塩味なら0.3~0.5%程度が「ちょうど良い」とされ、これを**「おいしい濃度」**と呼びます。
味の伝達経路:舌から脳へ
味は、単に舌で感じるだけではありません。以下のようなルートで脳まで情報が伝わり、「美味しい」と感じるのです。
1. 舌の乳頭と味蕾
舌表面の小さな突起「乳頭(にゅうとう)」には、味を感じ取る細胞「味蕾(みらい)」が存在します。舌の場所によって、感じやすい味に違いがあることも知られています。
2. 神経伝達
味蕾からの情報は、顔面神経・舌咽神経・迷走神経を通って延髄へ伝達されます。さらに視床を経て大脳皮質の味覚野に到達し、「味」として認識されます。
【模式図】舌の構造と味覚のしくみ
ご希望の「舌・乳頭・味蕾」の構造を視覚的に示した図を以下にご用意しました:→ 模式図は下部に表示しています。
美味しさを決める3つの構造要因
味覚は、単なる「化学反応」ではなく、多面的な要因から成り立っています。
1. 食べ物の要因
呈味物質(糖・アミノ酸・塩分など)の種類と濃度
食感や温度、香りなどの物理的要素
2. 食べる人の要因
感覚特性(五感の鋭さ、味覚感度)
生理状態(空腹・健康状態・ホルモン)
心理状態(ストレス、好み、思い出)
先天的要因(遺伝的味覚差:スーパーテイスターなど)
3. その他の要因
環境要因(時間帯、食卓の雰囲気、照明、音)
後天的要因(文化、経験、食習慣)
社会的・状況的要因(誰と食べるか、食べる場所)
食品と成分、それにより生まれる「うま味」の例 3選
ここからは、実際に私たちが口にする「食品」と、それに含まれるうま味成分を紹介します。
1. かつお節:イノシン酸
和食に欠かせないだしの元。イノシン酸は旨味の基本成分で、昆布のグルタミン酸と相乗効果を持ちます。
2. トマト:グルタミン酸+酸味
生のトマトには天然のグルタミン酸が豊富。酸味とのバランスで「うま味」を強く感じやすい食材です。
3. 干ししいたけ:グアニル酸
乾燥させることで生成されるグアニル酸は、植物性うま味の代表格。ベジタリアンやヴィーガン食でも活躍します。
まとめ:味は「科学」と「感覚」がつくる芸術
味覚は化学的に分析できる一方で、人の感情や経験にも深く結びついています。食品の成分を理解することで、「なぜ美味しいと感じるのか」が見えてきます。
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