腐敗の科学 食品が腐る理由と腐敗を防ぐ方法
- 山野熊さん
- 6月15日
- 読了時間: 4分

★一番最後に当店で一番利用している処理方法を紹介します★
〇 食品が腐る理由とは?
食品の腐敗とは、微生物(主に細菌・カビ・酵母など)の活動によって見た目・におい・味が劣化する現象です。特に常温・高湿度・酸素の存在がそろうと腐敗は急速に進行します。
<主な腐敗の条件>
水分活性が高い(肉・魚・カット野菜など)
周囲温度が20〜40℃(細菌の増殖最適温度)
酸素の存在(好気性菌が活発になる)
pHが中性〜弱酸性
※保存性を高めるには、これらの条件を意図的にコントロールすることが重要です。
〇 歴史に学ぶ:白鳥首フラスコとコンソメ実験
19世紀、ルイ・パスツールは「食品の腐敗は自然発生ではなく、空気中の微生物によって起きる」ことを証明しました。
◎【白鳥首フラスコ実験】加熱殺菌したコンソメスープを白鳥の首のように曲がったフラスコに入れた実験では、空気は通るが、ホコリや微生物は入らないためスープは腐敗しませんでした。
これは現在の無菌保存・殺菌の考え方の基礎となっています。
〇 レトルトパックの仕組みと原理
レトルト食品が常温で長期保存可能なのは、以下の2つの仕組みによります。
◎【原理①:高温高圧での加熱殺菌】
121℃で4分以上(食品内容物による)
芽胞菌も死滅させる「商業的無菌化」
◎【原理②:密封・再汚染防止】
殺菌直後に密封し、外部の菌を完全遮断
酸素透過性が低い包装材を使用
※レトルトの安全性は、芽胞菌対策が成功しているかどうかが鍵になります。
〇 菌と芽胞菌|殺菌を乗り越える微生物たち
◎【一般細菌と芽胞菌の違い】
種類 | 特徴 | 熱への耐性 |
一般細菌 | 増殖が速い。腐敗や食中毒の主因 | 60〜70℃で死滅 |
芽胞菌(例:セレウス菌、ボツリヌス菌) | 熱や乾燥・アルコールにも耐える「殻」状態 | 100℃では死なない。120℃以上必要 |
◎【芽胞は“休眠モード”の生存戦略】芽胞は加熱後も生き残り、冷却・保存中に発芽して通常菌へ戻り、再び増殖を始めます。
<芽胞対策の有効な方法:二段階加熱>
一次加熱(100〜121℃)→ 芽胞以外の菌を除去
冷却放置(発芽を誘導:数時間〜24時間)
二次加熱(70〜80℃)→ 発芽した芽胞菌を殺菌
◎この二段階処理により、**完全に近い殺菌状態(準無菌)**が可能になります。
〇 厨房で使える一般的な殺菌方法
方法 | 温度・特徴 | 使用シーン |
加熱殺菌 | 70〜100℃/最も手軽 | 肉・魚・野菜などの加熱調理で殺菌 |
高温加圧(レトルト) | 120℃以上/工業レベル | レトルト・缶詰など長期保存食品 |
アルコール(70%) | 接触即除菌/揮発性あり | 包丁・調理台・容器などの表面殺菌 |
次亜塩素酸ナトリウム | 50〜200ppmで使用/野菜の殺菌など | カット野菜・器具の洗浄 |
紫外線殺菌 | 表面の菌のみ有効 | 包装・製造ラインなどの機械表面除菌 |
〇 仕込み段階で行う殺菌技術|ボイル野菜・湯通し
◎湯通し(ブランチング)とは?食材を90〜100℃のお湯に短時間浸けることで、表面の微生物を除去し、酵素活性も停止させる方法です。
<具体例>
食材 | 湯通し時間 | 効果 |
蓮根 | 2〜3分 | 芽胞菌やアクの除去・色止め |
もやし | 約30秒 | 表面殺菌・食感保持 |
キャベツ | 約1分 | 菌の減少・しんなり感の調整 |
※湯通し後は急冷し、菌の再増殖を抑えることが重要です。
〇 食材別・菌ウイルス別の致死温度と殺菌時間一覧表
食材 | 主なリスク菌・ウイルス | 致死温度・時間 | 備考 |
鶏肉 | カンピロバクター | 75℃で1分以上 | 中心温度が重要 |
豚肉 | サルモネラ・トキソプラズマ | 71℃で1分以上 | 挽肉は特に注意 |
魚介類 | 腸炎ビブリオ | 60℃で10分 | 酢や塩にも弱い |
蓮根など土物野菜 | 芽胞菌(セレウスなど) | 100℃でも耐性あり | 酢水処理+加熱が有効 |
葉物野菜 | 大腸菌・リステリア | 70℃で1分 | 湯通し推奨 |
〇 腐敗を防ぐための三原則
◎1. 温度管理
10℃以下で保存/60℃以上で保温
常温放置を避ける
◎2. 時間管理
調理後は速やかに冷却し保存
食材の出しっぱなしを防ぐ
◎3. 清潔管理
器具・手指の洗浄と消毒の徹底
クロスやふきんも雑菌源になる
※このブログ記事は、飲食店のスタッフ教育・厨房管理・HACCP対応にも活用できます。 ★最後に当店で行う殺菌・滅菌方法をご紹介します。 <海産物>
①某酒類+塩類+二糖類 漬け込むことで細菌の発生と増殖を抑制している。 (ただし、ムスリム用食材は急速冷凍した物を急速解凍で使用している)
②酸処理後湯洗いする事で殺菌処理し、真空パック。その後急速冷凍
<鶏肉><豚肉> ①海産物同様、某酒類+塩類+二糖類 漬け込むことで細菌の発生と増殖を抑制している。 その後氷温熟成する事でうまみ成分を増やし、浸透圧と熟成のコントロールをする事でより旨味のある食材へ変化させている。
<ボイル野菜>1~2分の煮沸殺菌および無水アルコール処理し、タッパで保存。気化したアルコールにより二週間以上の保存が可能だが、三日ほどでなくなるのであまり意味がない。 (ただし、ムスリム用食材は急速冷凍した物を急速解凍で使用している)
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